結論: 不動産を含む遺産分割協議書は、法務局の記載例と登記事項証明書を手元に置き、対象の土地・建物と協議の結果を整理するところから始めましょう。ひな形の家族構成や分け方を、そのまま自分の相続に当てはめないでください。
対象は、不動産の相続について協議書の記載を準備したい人です。誰が相続人か、どのように分けるべきか、個別の協議が有効かを判定する記事ではありません。提出先で登記が認められることも保証しません。
公式のひな形を探す
法務局の「不動産登記の申請書様式について」には、「2-1 相続」の中に「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」の様式と記載例があります。記載例の中に、遺産分割協議書の例も掲載されています。法務局「不動産登記の申請書様式について」
今回確認した記載例は、相続人である妻と子2人が協議し、不動産を子のうち1人が相続する場面のものです。これは一つの事例です。 自分の家族の人数や続柄を、この例に合わせて減らしたり増やしたりして完成と考えないでください。
手続全体を確認するなら、法務省の「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」も参考になります。同資料は、比較的単純な相続のケースについて説明したものです。法務局「登記手続ハンドブック」
記載前に整理する資料
協議書を書く作業と、その前提を確かめる作業は分けましょう。次の表は資料整理のためのメモであり、必要書類の完全な一覧ではありません。

| 整理する対象 | 手元で確認する資料 | 決めつけずに確認する点 |
|---|---|---|
| 亡くなった人と相続の関係 | 戸籍の証明書など | 誰が協議の当事者になるか。家族の記憶だけで確定しない |
| 土地・建物 | 登記事項証明書など | 名義、対象物件、不動産の表示を確認する |
| 協議で決まった内容 | 話し合いの記録や整理メモ | どの不動産を誰が取得するのか。まだ合意していない点を分ける |
| 提出に使う書面 | 公式の記載例と添付資料の案内 | 協議書と登記申請書を取り違えない |
公式の記載例の注6には、登記原因を証する資料として、協議書のほか、亡くなった人の出生から死亡までの経過が分かる戸籍の証明書や、協議の当事者である相続人全員の戸籍の証明書などが案内されています。法定相続情報証明制度を利用する場合の扱いも記載されています。戸籍の集め方や必要な範囲に迷う場合は、市区町村や依頼先の専門家に確認してください。
土地と建物の表示を確認する
「自宅一式」「実家の土地」だけでは、どの不動産を指すのか、公式例の項目と照合できません。記載例では、土地と建物を分けて次の項目を示しています。
| 対象 | 公式の協議書例にある項目 | 照合するときの見方 |
|---|---|---|
| 土地 | 所在、地番、地目、地積 | 日常使う住所だけを手掛かりにせず、登記上の表示を確認する |
| 建物 | 所在、家屋番号、種類、構造、床面積 | 土地とは別に確認し、階ごとの床面積も取り違えない |
記載する前に、登記事項証明書の該当欄と一つずつ見比べてください。これは書き写すための準備であり、対象財産の範囲や権利関係をこの記事で確定するものではありません。マンションなど、掲載例と表示の形が違う場合は、例の項目を無理に当てはめず、個別に確認しましょう。
登記申請書の説明には、不動産番号を記載した場合の省略方法もあります。ただし、登記申請書についての省略方法を、そのまま協議書の省略方法だと考えないでください。この区別に迷ったら、相談時の質問に残します。
協議書の項目を読み取る
公式例は、相続が始まった事情、協議した当事者、誰がどの不動産を相続するか、協議書の作成日、署名・押印、不動産の表示という順に読めます。以下は各欄を理解するための確認表です。そのまま署名して使うひな形ではありません。

| 読み取る箇所 | 準備するメモ | 避けたい取り違え |
|---|---|---|
| 相続の開始 | 亡くなった人と死亡日を確認する資料 | 登記申請書の「原因」の日付を、協議が成立した日にしない |
| 協議の当事者 | 関係資料と、確認が必要な点 | 同居家族や兄弟だけで当事者が尽くされると決めない |
| 取得する人と財産 | 合意した内容と、対象不動産の一覧 | 公式例の単独相続をそのまま採用しない |
| 作成日と署名・押印 | 実際の内容に即した確認事項 | 例にある日付、人数、作成通数を残さない |
共有にする、代償金を支払う、売却して分けるなど、例とは異なる内容を考えている場合は、この例に言葉を足すだけで済ませないでください。どのような書面にするかを法律の専門家に相談しましょう。
押印と添付資料の確認
公式の協議書例は、署名・押印の欄に実印を示しています。注15では、印鑑証明書と同じ印を押し、印鑑証明書を各1通添付すると説明されています。また、印鑑証明書について、3か月以内に作成されたものでなくてもよいと記載されています。
ここでの説明は、掲載された登記申請の記載例に沿ったものです。誰の印鑑証明書が必要か、どの書類と組み合わせるかは、実際の申請内容と最新の案内で確認してください。協議書の押印と、登記申請書自体の押印の説明も分けて読みます。
完成と判断する前に: 印がそろっていることだけで、協議の有効性や相続人の範囲、登記申請の受理を判断しないでください。合意していない事項や確認できていない関係は、書面を完成扱いにせず相談へ持ち込みましょう。
相談先と個人情報の扱い
ハンドブックは、遺産の分割方法や協議書の作成については法律の専門資格者や法律相談窓口へ問い合わせるよう案内しています。法務局では、分け方や協議書作成の相談には応じられないとも明記しています。登記申請の手続案内と、個別の協議書をどう作るかの相談を区別してください。
戸籍、住所、印鑑証明書などを、公開コメントや誰でも見られる共有リンクへ載せないでください。相談先に送る場合も、提出先、必要な範囲、送信方法を確認しましょう。
エンディングノートには「関係書類の保管場所」「相談先」「確認が済んでいない点」を残す方法があります。パスワード、暗証番号、認証コードは記入しないでください。ノートは遺産分割協議書や遺言書の代わりではなく、医療上の指示でもありません。
よくある質問
ひな形を埋めれば登記できますか?
そうとは限りません。公式例は特定の相続関係と協議結果を想定しています。対象不動産、当事者、協議内容、添付資料が自分のケースに合っているか確認が必要です。
家族全員が納得していれば当事者の確認は不要ですか?
家族内の理解だけで、法律上誰が協議に関わるかを判断しないでください。相続関係を示す資料をそろえ、不明点は専門家に確認しましょう。
まず何をすればよいですか?
公式の記載例を開き、手元にある登記事項証明書と、まだ確認できていない事項を分けてメモしてください。記載内容を決める前の相談に使えます。
この記事は一般的な情報提供であり、法律・税務・医療に関する個別の助言ではありません。相続関係や協議の有効性、登記の可否は個別に確認してください。
